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造語の傾向

  • 初版:2014年01月12日
  • 更新:2014年03月20日

複合語の材料選定

言語には言語ごとに,複合語を作る際の傾向のようなものがある.例えば,日本語は動詞から単独で複合語を為すことは少なく,名詞で主要部を補うことが多い(例:搭乗する→搭乗者,冷蔵する→冷蔵庫).一方,英語の場合は接辞をつけて動詞を名詞化する方法が存在し,それが人なのか物なのかを明示しなくても良い場合が多い(例:ride→rider,freeze→freezer).

イジェール語では,基本的には英語と同様の方法を取る.つまり,派生語を形作ることで動詞から名詞を作っていく.もっと細分化したい場合には,他の名詞を接続して,より複雑な語を形成する.

派生語の生成

イジェール語では,動詞に対して主格,対格,再帰自動詞の主格の3つの項に値する名詞を作る接辞が用意されている.例えば,tireは「主格が,対格の内容を,与格に向かって,話す」という動詞である.この動詞を元にtirom「話者(主格)」,tiresk「発話内容(対格)」が作れる.avvadae「主格が,対格を,爆破する」という動詞からは,avvadaom「爆破者」,avvadaesk「爆発物」,avvadaa「自らを爆破するもの=爆弾(再帰自動詞の主格)」が作れる.さらに,動詞語尾の-eを取り外すことで,その性質自体を指す名詞を作ることができる.tireからはtir「会話,発話」,avvadaeからはavvada「爆破」が作られる.

対象の指定

一方で,これだけでは意味が細分化できない場合もある.例えば,cartigom「運搬者」だけでは何を運搬しているかわからない.「航空母艦」や「タンカー」のように,何を運搬しているかまで含めて複合語を作りたい場合,イジェール語では本来の動詞の対格に来る語を前置して造語する.この際,複合語の最後の単語以外の接辞は全て取り外される.

行為者の指定

前項とは逆に,その名詞がどういう物体なのかを指定したい場合もある.前述の例なら,cartigom「運搬者」だけでは,貨物トラックも貨物船も貨物飛行機も区別できない.こういう場合は,本来の動詞の主格に来る語を後置して造語する.

動詞によらない複合語

いつでも動詞を元に造語できるわけではない.例えば,「花火」には対応する動詞がないので,fabar「火薬」とeda「絵」からfabareda「花火」が作られている.この場合は,右側の要素を左側の要素が修飾する形で語が形成される.また,このように複数語を接続する際は,無声子音に対して義務的な連濁が発生する.h,k,s,t,c,p,fがそれぞれg,g,z,d,d’,b,vになる.変音記号がついていても,同様である.

実際の運用

実際には,以上の4つの方法が組み合わさって複合語を形成する.同じ概念を示すのに複数の語が考えられるときは,そのうち出来る限り構成要素が少ない単語が定着しやすい.また,文脈上明らかなときは,複合語の要素が脱落する時がある.例えば,cartigom「運搬者」では車か船か飛行機かわからないとはいえ,わざわざ指定しなければ混乱する場合というのはそう多いものではない.空港で貨物トラックと貨物飛行機を区別する必要がある場合に特別にcartiggarme「運搬車」,cartigvadeaa「運搬飛行機」と呼び替えられるくらいである.

古語の生成傾向

今まで述べたのは現代語の造語傾向であり,古語の傾向は全く異なる.イジェール語はもともとかばん語による形成を基本としており,2音節程度の長さになるように適宜形態素がカットされて新たな形態素となるのが普通だった.また,古い語ほど動詞ではなく形状や役割からくる名詞による造語に頼る傾向がある.例えば箸はgezで箸置きはgezdeaだが,この生成は現代語的ではない.現代語であれば「箸を置かれるもの」という動詞を基本として生成されるだろう.deaという土台を意味する語から生成されているのは,この語の歴史がそれなりに長いからである.

実際の例を元になる文章と複合語を示す.

  1. dukese「理論化する」→dukesesk「理論,論(対格)」,dukes「理論化(性質)」,dukesom「理学者(主格)」
    関係を文章で示すと,Ze dukesomef dukesesku dukese f dukes.
  2. fadeae「飛ばす」→fadeaa「飛行機(再帰自動詞主格)」
    cartige「運ぶ」→cartigom「運搬するもの(主格)」,cartigesk「荷物(対格)」
    fadeaa+cartigom→fadead’artigom「航空母艦」
    空母の例では,再帰自動詞の主格を表す接辞-aは,複合語形成の際に外されている.
  3. behin「後ろの」+kep「蓋」→behgep「尾栓」
    記述詞語尾の-inが取り外され,kが連濁している.